はじめに
自宅ラボのネットワークを構築するにあたり、RTX 1300 ルータの配下に置く
スイッチを探していたところ、FS 社の「S3100-16TMS-P」を導入したのでレビューをします。
購入経緯
自宅ラボの環境小型化計画を進めており、10インチサーバラックに乗るインテリジェンスなネットワークスイッチが欲しいなあと9月後半に思い始めたのがきっかけです。
自宅ラボのコアルータには YAMAHA 社の RTX 1300 を動かしており、この製品にはデフォルトで8ポート のスイッチングハブが搭載されています。また、フレキシブル LAN 機能を持っているのでごく普通の家庭で運用するには十分事足りる性能を持っています。
が、ケーブルの冗長化なんかをやり始めると 8ポートでは足りないうえに、これら 8ポート は 1GbE であるため、RTX1300 ルータがウリとしている 10GbE の機能は全く活用できていません。
そんなわけで 10GbE に対応してるスイッチとして Allied Telesis 社の AT-SH510-28GPX をスタッキングし運用していたわけですが、こいつは 1U 機器になるので10インチサーバラックには残念ながら乗りません。
さらに PoE 給電機能が付いてますが無線 AP も小型化して PoE 給電を殆ど使わなくなってしまったうえ、引っ越しでプロバイダ回線の提供エリアが 10G 回線から 1G回線となり RTX1300 の機能も殆ど遊んでいる状態になっていました。
ということで自宅ラボを小型化するにしても、10 GbE ローカル環境を整えつつ、
LACP やスタッキング、PoE 給電に対応してる10インチラックに乗るサイズのお手頃スイッチがあればな~と
探していたところ...
https://www.fs.com/jp/products/160710.html

FS 社のスイッチが検索にヒットしました。なんだこの変態が好きそうなスイッチは...
というわけで
買ってしまいました、デカい箱で送られてきたが半分は梱包材です。

外観としてはこんな感じ。ポートは左から順に
- console port
- 10GbE SFP+ ×2
- 5GbE PoE+ ×2
- 1GbE PoE+ ×6
- 1GbE ×10
となっており、最大 125W の給電が可能のようです。
恐らくこのサイズでこの数のポート数を揃えてるのはこの製品だけではなかろうか。

中にはクイックガイド、電源コード、接地ケーブル、1Uラックマウントの耳が同封されていました。
また、データシートによると CPU は1GHz 動作、512MB の SDRAM、256MB のフラッシュメモリを搭載しており、SSH や VLAN、QoS、SNMPv3 機能などを備えておりL2 スイッチの運用としては十分な機能を兼ね備えてるスペックと言えるでしょう。
総転送量は 82 Gbps と S3100 スイッチシリーズでは一番の転送量となっておりジャンボフレームの転送にも対応しています。
良かった点
コマンド操作が Cisco ライクであったところ
今回 S3100-16TMS-P を触っていて、一番良かったと感じたのが CLI の操作性。
YAMAHA のルータを触ったことがある人なら分かると思うが、YAMAHA ルータ製品は独自のコマンド体系を採用しています。
そのため、「あの設定をしたいけどコマンドは何だったか」と悩み、設定マニュアルを読み返す場面がよくあります。
一方、FS 社のスイッチはネットワーク機器大手である Cisco の CLI に非常によく似ており、操作に慣れていれば戸惑うことは殆ど無いと言えるので、学習コストが低いという点においては非常に優秀だと言えます。
※ホスト名は消去しています
#enable
#conf te
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
(config)#int fa
(config)#int G
(config)#int GigabitEthernet 0/3
(config-if-GigabitEthernet 0/3)
拡張性の高さ
冒頭の外観で説明をしましたが、ポートの多さもこのスイッチのウリといえます。
SFP+ を備えていることはもちろんのこと、5GbE 2ポートは最近のゲーム PC を繋げるのに良いですし PoE 給電機能が使えるので無線 AP や IP カメラを接続するのに使えるというのも良いです。
※ホスト名は消去しています
#show interfaces status
Interface Status Vlan Duplex Speed Type
---------------------------------------- -------- ---- ------- --------- ------
XSGigabitEthernet 0/1 up 1 Full 10G fiber
XSGigabitEthernet 0/2 down 1 Unknown Unknown fiber
FiveGigabitEthernet 0/1 up 1 Full 2500M copper
FiveGigabitEthernet 0/2 up 1 Full 2500M copper
GigabitEthernet 0/3 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/4 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/5 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/6 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/7 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/8 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/9 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/10 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/11 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/12 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/13 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/14 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/15 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/16 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/17 down 1 Unknown Unknown copper
GigabitEthernet 0/18 down 1 Unknown Unknown copper
#show poe interfaces status
Interface Power Power Curr Avg Peak Curr Trouble PD Port
Control Status Power Power Power Current Cause Class Voltage
----------------------------------------------------------------------------
Fi0/1 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
Fi0/2 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
Gi0/3 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
Gi0/4 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
Gi0/5 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
Gi0/6 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
Gi0/7 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
Gi0/8 enable off 0.0W 0.0W 0.0W 0mA 0 N/A 0.0V
LACP や STP や VLAN 等の機能を搭載
スパニングツリーや LACP や VLAN 、SNMPといったインテリジェンススイッチに含まれている機能は殆ど搭載しています。
ただ、欲しかったスタッキングには対応していませんでした。
でも、価格は7万と少しで納まっていることを考えると自宅で運用するには十分な必要な機能が備わっているとも言えます。
※ホスト名は消去しています
(config)#spanning-tree ?
forward-time Set forward delay for the spanning tree
hello-time Set the hello interval for the spanning tree
loopguard Spanning tree loopguard options
max-age Set bridge max age interval for the spanning tree
max-hops Set the max hops value for the spanning tree
mode Set spanning-tree mode
mst Multiple spanning tree configuration
pathcost Spanning tree pathcost options
portfast Spanning tree portfast options
priority Set the bridge priority for the spanning tree
reset Reset spanning tree
tc-protection Enable tc protection on this switch
tx-hold-count Set the tx-hold-count for the spanning tree
<cr>
(config)#int ra XSGigabitEthernet 0/1 - 2
(config-if-range)#port-g
(config-if-range)#port-group ?
<1-128> Aggregate port group number
(config-if-GigabitEthernet 0/3)#swi
(config-if-GigabitEthernet 0/3)#switchport mode
(config-if-GigabitEthernet 0/3)#switchport mode ?
access Set trunking mode to ACCESS unconditionally
dot1q-tunnel Set mode to Dot1q-tunnel
hybrid Hybrid
private-vlan Private vlan
trunk Set trunking mode to TRUNK unconditionally
uplink Set mode to UPLINK
cisco とは若干違うところもありますが、おおむね直感的な操作ができると思います。
ファンレスであるところ
こいつの凄い点と言えるのが SFP+ や PoE を搭載しているにもかかわらず「ファンレス」であること。筐体は金属でできており、熱を逃がしやすくするために襞状の構造をしています。
自宅で悩まされる騒音が無くなり、ホームラボを運用する点においては非常に良いと言えます。
日本語サポートがある
マニュアルは英語ですが、一応 FS 社のお問い合わせ窓口には日本語対応者も居るので何か分からないことがあればサポートへお問い合わせすることも可能です。
日本の技術者にとっては嬉しいことです。
悪かった点
電源ポートが横に付いてる
一番ダメだった点、マウントできる機器としては初めて見ました。

恐らく色々詰め込んで設計していたらこうなってしまった感が否めませんが奥行きをもっと伸ばしたりとかもっとこう...なんかあっただろ。
このため 1/2U のサイズを実現してるにもかかわらず 1U に2台設置するということは電源ケーブルが干渉するので物理的に不可能です。
なお付いてきたケーブルは日本で使えるプラグだったがコネクタがまっすぐの形状であったため10インチサーバラックでも壁に干渉します。

そのため以下のように L 字ケーブルを別途買って対策する必要があります。
(見えづらいが10インチサーバラックの奥には灰色のプラスチックの壁があります)

SSH が SHA-1 しか対応してない
これも衝撃的ですが、OpenSSH 9.x 系クライアントから接続したところ、以下のエラーが出ます。
error:03000098:digital envelope routines:do_sigver_init:invalid digest原因はサーバが提示したアルゴリズムが SHA-1 の影響だからなのですが、FS 社に問い合わせたところ、本記事記載時の最新バージョン 11.4(1)B81P1T2 では SHA-2 には対応してないとのことでした。
そのため、クライアント側でポリシーを落とすしかありません。
Web 管理画面の作りが微妙
よくある CLI 操作には慣れていない人向けに作られている Web 管理画面がありました。
HTTPS に対応しているようですが、デフォルトの証明書期限は何故か1970年のものになっていたというのが気になるところ。

一応自己証明書を発行するコマンドが用意されていますが、期限は10年くらいに設定されます。
# web-server https generate self-signed-certificateなおこのコマンドで RSA のビット数を 4096 で指定すると CPU が張り付きました。

また、ほぼ通信も何もしてないにもかかわらず CPU 使用率が異様に高いので調べてみると
httpd の CPU 使用率が高いです。
# show cpu
===============================================
[Slot 0: S3100-16TMS-P]
CPU Using Rate Information
CPU utilization in five seconds: 98.00%
CPU utilization in one minute: 53.00%
CPU utilization in five minutes: 45.40%
NO 5Sec 1Min 5Min Process
1 0.00% 0.00% 0.00% init
2 0.00% 0.00% 0.00% kthreadd
...
1339 88.70% 40.90% 33.20% httpd.elf更に Web 管理画面にログインするユーザは追加していくことができますが
デフォルトでいる admin ユーザは削除できないときた。(パスワード変更は可能)
#no webmaster level 0 username admin
% Cannot delete the default user.というわけで弊自宅ラボでは Web 画面君は船から降りてもらうことにしました。
# show processes cpu nonzero
System Uptime: 03:55:03.3
CPU utilization for five seconds: 12.0%; one minute: 12.2%; five minutes: 12.6%
Virtual CPU usage in five seconds: 0.2%; one minute: 0.0%; five minutes: 0.1%
set system cpu watermark (open): high up 85%, down 75%
Tasks Statistics: 140 total, 3 running, 136 sleeping, 1 stopped, 0 zombie
Pid Vsd S PRI P 5Sec 1Min 5Min 15Min Process
1160 0 S -2 1 0.1(0.1) 0.0(0.0) 0.1(0.1) 0.1(0.1) efmp_frame.elf
1542 0 S 20 0 0.0(0.0) 0.1(0.1) 0.1(0.1) 0.1(0.1) sysha
2008 0 S 20 0 10.8(10.8) 11.2(11.2) 11.6(11.6) 11.5(11.5) ssa_process
2018 0 S 20 0 0.2(0.2) 0.1(0.1) 0.1(0.1) 0.1(0.1) ssc_process
2395 0 S 20 0 0.7(0.7) 0.8(0.8) 0.8(0.8) 0.8(0.8) rl-con/0デフォルト DNS サーバ参照先が変
初期の config を見ていたら以下のような設定がありました。
#show running-config
Building configuration...
...
ip name-server 114.114.114.114114.114.114.114 ってどこやねん!と思って調べたら中国の DNS サーバのようです。
でもマニュアルにはデフォルトは設定されていません、と書かれていました。
Defaults No domain name server is configured by default.設定変更はしましたが、公開されているとはいえ外部サーバのサービスを指定してるのは
モヤモヤするなあという点がありました。
運用情報が全くない
製品としては3年前からあるらしいですが、何故か SNS や reddit やネット検索しても S3100 シリーズのスイッチを運用している人のレビュー情報が全くありません。(FS 社サイト除く)
なので今回購入するにあたっての事前調査はマニュアルだけの完全人柱状態です。
ただし、「情報が少ない = 製品が悪い」というわけではないので今後も何かしらのレビューはしていきたいと思っています。
そのほか注意点
10GbE を使用するには専用トランシーバモジュールが必要
S3100-16TMS-P には RJ-45 コネクタの 10 GbE ポートはありません。
なので、ルータとスイッチ間を10 GbE で繋ぐには以下のように SFP+ 専用トランシーバモジュールと光ファイバーを別途用意する必要があります。
※S/Nは伏せています

今回私が使用したモジュールは以下です、ちゃんとローカル 10GbE 通信に対応させたい場合は
事前に用意しておきましょう。
https://www.fs.com/jp/products/11589.html
余談
RTX1300 って LAN2/LAN3 だけプロバイダ設定ができる認識でしたが、フレキシブル LAN 機能を使えば物理 LAN1 ポートにプロバイダ設定ができることを今更ながら知りました。
こうするとローカル 10GbE 通信用の物理 LAN2/LAN3 ポートが空きます。

終わり
10インチサイズなのでケーブルホルダーに LAN ケーブルが納まらない問題とかが発生してましたが
ひとまず必要最低限の配線作業を終わらせました。

サーバとの結線作業は後々やっていこうと思います。
いやぁ、それにしてもケーブルマネジメントって難しいですね。




